自己破産申し立てをして破産勧告を受けただけでは債務(借金)は免除されず、その後免責申し立てをして免責決定を受けて初めて債務が免除されます。現在行われている個人の自己破産申し立て事件では、免責申し立てをした破産者の95%近くが面積決定を受けています。
裁判所は、免責の審理の結果、破産者に破産法の定める免責不許可事由がなければ面積決定をします。免責不許可となるのは、破産者に破産法の定める免責不許可事由がある場合ですが、破産者にも免責許可理由があっても、破産者が反省をして真面目に生活を立て直そうと努力していたり、破産者に同情すべき理由がある場合などにおいては、裁判所の最良により免責決定がなされる場合があります。
破産法が定める免責許可理由の主なものは、
@破産財団(破産者が破産宣告時に持っていた財産)を隠したり、壊したり、債務者に不利益処分にしたような場合
A浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したような場合
Bクレジットカードで商品を購入し、すぐにその商品を安い値段で転売したり、質入れして現金を得したような場合
C破産宣告前1年以内に返済不能であるにもかかわらず、そういう状態ではないかのように詐術を使って債務者を信用させて借金したような場合
D虚偽の債権者名簿を裁判所に提出したり、裁判所に財産状態について虚偽の陳述をしたような場合
E免責の申し立て前10年以内に免責を得たことがある場合
F破産法の定める破産者の義務に違反した場合、などとなっています。
自己破産申し立てをして破産宣告を受け、破産者となったことによる不利益で一番大きなものは、公法上、私法上の資格制限である資格制限でしょう。破産者は、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、公安委員会委員、公正取引委員会委員、土地建物取引業者、証券会社外務員、商品取引所会員、貸金業者、質屋、生命保険募集者、損害保険代理店、警備業者、警備員、建設業者、風俗営業者などになれず、すでに取得している資格は失われます。
また、破産者は合名会社や合資会社の社員、株式会社や有限会社取締役や監査役にはなれないし、代理人、後見人、貢献監視人、保佐人、遺言執行者などにはなれません。
これに対し、破産者となっても、特殊な職を除く一般的な国家公務員や地方公務員、学校教員、宗教法人役員、医師、看護師、古物商、建築士などは、その資格に影響ありません。選挙権や被選挙権など公民権も失いません。
破産者が不動産などのめぼしい財産を所有しているために、破産管財人が選任されて破産手続きが行われる場合、資格制限のほかに、破産者は
@破産宣告時に所有していた財産の管理処分権を失う
A長期の旅行や転居をする場合は裁判所の許可が必要となる
B郵便物がすべて破産管財人のところに配達され破産管財人に開封されてしまう、などの不利益があります。
しかし、公法上・司法上の資格制限は、免責決定が確定すればもう破産者ではなくなり、全て紹介されるので、失った資格も取得することができます。また、破産管財人選任による破産者の不利益は、破産手続きが終了すればすべて解消されます。
結局、免責決定確定後にも残る不利益と考えられるものはふたつだけです。ひとつは、銀行やサラ金からの借金やクレジットカードの発行が、5〜7年間は困難となることです。破産宣告を受けたことが、銀行系・クレジット系・サラ金系の各個人信用情報機関に事故情報(ブラック情報)として登録されるからです。もうひとつは、破産法の免責許可事由Eが定めるように、再び多額の借金をして自己破産申し立てをしても、今後10年間は原則として免責決定を受けられないということです。
なので、自己破産による不利益は、一般の人であればそれほど大きなものではありません。しかし、自己破産に対する誤解や偏見がまだまだ多く存在します。
その中で一般的に多く見受けられるのが、
@ 破産すると一生みじめな生活を送らなければならなくなるのではないか
A 破産したことがご戸籍や住民票に掲載され結婚や就職に支障が出るのではないか
B 破産したことが勤務先に知られてしまい、解雇されるのではない
C選挙権・被選挙権などの公民権も失うのではないか、などというものです。
しかし、自己破産申し立てをすれば破産宣言時に所有していた不動産などめぼしい財産は処分されることになりますが、宣告以降に破産者が得た収入は原則として破産者がすべて自由に使うことができます。なので、破産者はそれから一生懸命働くことによって生活を立て直し、再出発することができます。
また、破産宣告を受けても戸籍謄本や住民票に掲載されることはないので、破産者の家族の結婚や就職に支障があるのではなかという心配はありません。
破産宣告を受けると、破産者の本籍地の市町村役場の「破産者名簿」に掲載されますが、この名簿は第三者が勝手に閲覧できるものではありません。また破産者が免責決定を受けると、この名簿からは抹消されます。
さらに、破産宣告して破産宣告を受けたことは官報で公告されるとはいえ、一般の人が目にすることはほとんどありませんし、裁判所から破産者の勤務先に破産宣告の通知がなされることはありません。
なので、破産者が自ら勤務先の会社にいわない限り、一般に破産宣告を受けたことが会社に知られることはありません。万一、破産宣告を受けたことが勤務先の会社に知られたとしても、会社それを理由に破産者を解雇することはできません。
生涯返済していくんでしょうか?
ご存知だったら教えて下さい。